カルシウム、文章サイト。

あなたと、わたしと。

期待されるのがいやだったから期待しなかった。裏切られるのがいやだったから信じなかった。嫌われるのがいやだったから好きにならなかった。

「西さんと一緒にお弁当を食べるよ!」
「…やめなさい」

彼女が何を考えているのか、私には理解できなかった。言動に毎回、驚かされている。第三者のままなら問題なかったのに、彼女は、私と会話していた。誰も、私とは話したがらなかったのに。リスクが大きすぎて誰も、私となんか。それなのに彼女は。

「何で?抜け駆け禁止ーとか?」
「…違うけど」

彼女は私を、他の人とは違う扱いかたをした。虐げられていた私を、私なんかを、とても大切な人みたいに。なくしたくない友達みたいに扱ってくれている。願ったわけでもないのに、助けてくれる。庇ってくれる。でも、優しくされると甘えてしまうし、みんなの前で堂々と、というのは、目立ち過ぎるから、私はわざと、その子には冷たくした。

「じゃあ、何でダメなの?」
「私はあんたなんかと食べたくないの!」

驚いた彼女を置いて、いつも逃げ道にしていた屋上へ行った。学校中で最も高いそこからは、全てを見下すことが出来た。一人になれた。だから私は、そこが好きだった。いつも、影でパンを食べて、予鈴で教室に戻っていた。今日も、そうするつもりだった。

「みっけ!」
「!」

追ってくることは、予想していなかった。そうまでして一緒にいることを望むなんて、そんな人が。彼女は私を見て、笑った。それから、指摘した。

「あたしは西さんしか見てないのに、西さんは他の人と喋ってるみたいだよ!」

本当の西さんがいいな、と、彼女は笑っていた。あたししか知らない西さんもいいけど、と付け加えて、私の手を強く握った。まだ笑顔だ。なんだか、とても、なにかが、痛い。それが何なのか分からないのが嫌だ。ああ、まだ私のことを、まっすぐ見つめている。

「友達なのに!」

友達だとはまだ認めていないのにもう友達なのか、と、ぼんやり思った。

「……そうね」

手を握り返してみると彼女は、ずっとそれを待っていたみたいに笑った。