僕と話しているときの彼女はとても魅力的だと感じていた。しかし他人と話し始めた瞬間に彼女は醜い姿に変貌し、僕に恐怖を与え、それを彼女と認識することが苦痛だと気付いた。彼女は僕と目が合ったときには必ず微笑み、その瞬間だけは魅力的になり、また醜い姿に戻る。彼女とは長い付き合いだが、彼女が醜くなるようになったのは最近だ。本当に、気持ち悪い。僕は彼女の醜い姿を見たくない。美しいままでいてほしい。
『○○って髪すっごい長いねー』醜いものが、彼女と全く同じ声で、口調で、仕草で、答える。会話を楽しむ女子達は普段と変わらず醜いのに、彼女だけが普段と違って醜い。こんな姿は、もう見ていたくないな。気持ち悪い彼女は彼女じゃないんだから。美しい姿で僕の傍にいてほしかったけれど、美しくないのならば生きていられることさえも嫌だ。僕がその醜いものと親しくしていたという事実を、なかったことにしたい。
死んでくれたら良いなって、思うんだ。
私は彼のことを前々からきれいな人だと思っていて、心も身体も、何もかも、全て、汚されていないと信じていました。彼が私のことを何度も・いつまでも見つめていることや、私が他の人との会話を楽しんでいるときに恨めしそうに睨んでいることも、理解していました。私は、愛されていると分かっていたからこそ、彼を愛していました。自分ばかりが与えるなんて、私は絶対に嫌なのです。与えた分だけ貰わないと、納得できません。
『○○って髪すっごい長いねー』私の髪の長さや美しさなどの褒め言葉を貰っても、彼女達には何も、与えなくて良いと思っていました。汚らわしい人には、何も与えなくて良いと思っているからです。汚らわしいというマイナスを与えるというプラスでゼロに戻しているからこそ、存在していられるのです。きれいな彼だから、貰える愛の分だけ与えました。
しかし彼にとって、もう遅すぎたみたいです。
僕は彼女を校舎の裏に呼び出した。彼女の一生を僕に捧げてもらおうと思ったからだ。更に醜くなってしまう前に、美しいうちに、僕のものになってほしかった。僕は美しいままの彼女なら、抱き締めても、人形にして部屋に飾っても、殺してもいいと思っていた。殺人の罪など、どうって事はない。けれど醜いのならば、彼女がこの世界で生きている必要なんて無くて、むしろ、この世界に生きているせいで彼女は醜くなってしまうのだから、生きていてほしくない。
「どうしたの?」ナイフなんかで君を傷付けたくないんだ、君は美しい今のままで僕のものになるべきだ、君の血なんて見たくない、紅く染まった君は君じゃない、君は雪のように白い肌のまま純白のドレスで僕と一緒に踊るんだ、僕は君と対になるように漆黒のタキシードでダンスパーティーに誘うよ。パーティーの主役は勿論、分かっているよね。
真っ白の心に真っ黒の罪を纏った僕たちだよ。
もう遅いと分かっているのに呼び出した彼が何をするのか、想像できていました。きっと殺されると、本能で察知していたのです。彼は笑ってしまうと自分が崩れてしまうと分かっていたようで、感情を捨てた状態でした。身体は全く動かさず、口だけが、操られているように動きます。あんなに、あんなに、あんなにきれいだったのに、あんなにすなおだったのに、あんなにあいしてくれたのに、あんなに、あんなに、
「どうしたの?」こんな彼は、彼ではありません。私のことを愛していると気付いていない彼なんて、彼ではないです。絶対に、この彼は彼ではないと、言い聞かせました。彼ではない彼なんて私にとって必要ないし、きれいだった彼が穢れてしまって汚れてしまったのならば、私は彼を抹消して、きれいだったころのままで記憶に残さないといけません。ごめんね、君はもう君じゃないから、この世に生きていちゃいけないんだよ、許してね、君をきれいのままで保存しておくだけだからね。
先に首に手を伸ばし、届いたのは、私だったと思います。
先に手が届いたのは彼女の方だったが、もともと彼は首など狙っていなかった。彼女を美しいままで保存しようという彼なりの工夫で、跡が残ると目立つ首は避け、服を着せれば問題はない胸部・腹部を狙って蹴った。(彼がほれたのは彼女の顔であり、彼女自身ではない。)彼女は痛みなど気にせず、手に力を込めて、醜いものの、命を、この世から、消した。残骸は、傷を彼女の体に残し、力をなくした。
「醜いわ」彼は何といわれようと反応など出来ないし、彼女は彼がどのように反応しようとそれを見ようとはしない。彼はもう、醜いから。
彼女は彼をそこに残し、この世から姿を消した。
お粗末さまでした。読んでくださってありがとうございました。がんばります。続いていく話をかっこいいと思った割には続きを書いていません。無計画では生きていけませんね。四人だけで何とかしようというのも無理がありました。ああ駄目だ。お疲れ様でした。こんな所まで読んでくださると思わなかったので、本当に嬉しいです。